第12回 星野立子賞
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『雨滴』の句を詠んだ十三年間は、主に生活や身辺のこと、具体的には衣食住や家の雑事、近所の海山や虫や鳥や魚、草木や花に心あたためられる時間でした。そこで俳句について私が考えましたことは、「生活の中からどのように詩を汲み上げるか」「汲み上げた詩は生活者としての私を支えてくれるのか」ということでした。
私の俳句は人生のなりゆきに従う作り方をしております。これから人生がどうなっていくのか、想像できるようですが、本当はよくわかりません。ただどうなったとしても、そのなりゆきの中での生活は続くはずですので、私の二つの問いも続くものと考えております。
あまたの名句を残された星野立子先生は憧れの人でございまして、星野立子賞はつくづく身に余る賞です。これからはこの賞を大切な重い鏡として胸の中に持ち、自らを照らしながら、またゆっくりと地道に歩んでいきたいと思います。

受賞の連絡を受けた時はただ呆然としてしまい、電話越しの担当者の方に淡泊な印象を与えてしまったかもしれません。これまで新聞投稿欄等で慎ましやかに入選することはあっても、連作形式で評価して頂く機会にはなかなか恵まれませんでした。立子新人賞は私が「俳人」としての道を歩みだす確かなきっかけとなりました。
受賞作の 『変声期』というタイトルは、連作の“トーンを揃える”ことを苦手としていた私の、ある種のエクスキューズでした。しかしながら、NHK俳句やプレバト!から俳句の勉強を始めた私にとっての「幼年期の終わり」と解釈するならば、この五十句が、今後の私自身の実作の指針として大きな爪痕を残したことは言うまでもありません。
受賞式から一年以上、未だに夢を見ているかのような心地です。句座を囲んでくださった方々、これまで指導いただいた全ての方々、私を支えて下さった全ての方々に、改めて感謝申し上げたいと思います。
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第12回星野立子新人賞を頂戴しましたことを、深く御礼申し上げます。日頃ご指導頂いている上野一孝先生、10代の頃から温かく見守ってくださっている梓俳句会のみなさま、言葉を通して繋がっているみなさまに心からの感謝を申し上げます。
俳句を詠むことを今日までずっと楽しく思えてきたことは、とても幸運だったのだと改めて実感いたしました。
これからの長い時間を生きていく上でさまざまな困難や変化があると思いますが、自分の感動に向き合って、読者と心を通わせられるような素直な句を詠み続けたく思っております。