第10回 星野立子賞

各賞をクリックすると、受賞者のコメントや句集のPDFが見られます。

星野立子賞 井上 弘美 『夜須礼』

私が「星野立子賞」を頂いたのは第十回の節目で、コロナ下で授賞式が無かったこともあって、選考委員の先生方の講評を胸に沁みる思いで、ありがたく拝読した。
それから三年を経て思うことは、「星野立子」という時代を超えて屹立する俳人に、大きく背中を支えられているという実感だ。とりわけ晩年の立子が、大病による後遺症をおして、左手のみで筆を執ったという、毅然たる姿に姿勢を糺される。俳句と共に生きるとはどういう事か、立子が身をもって教えている。立子に背中を支えられつつ、一方で覚悟を問われる思いだ。
選考委員のお一人であった黒田杏子先生が急逝されて、第十二回からは選考に携わることになった。心して選考に当たることはもちろん、受賞者の一人としても、「星野立子賞」の名を汚さぬようにとの思いは、ますます深い。

星野立子新人賞 西山 ゆり子 『ペダル』

応募作品は台所のテーブルで完成させました。
新型コロナウイルス蔓延で職場の業績が傾き、ダブルワークで凌いでいた時期。帰れば2人の子どもがいて静寂がありません。本来パソコンを置くべきデスクは、本やらガラクタやらにあっという間に埋もれてしまいました。この波に呑まれるものかと、投稿作品を書いては消しました。
賞に挑戦することは、自選の目を鍛え直す修行であると思っています。修行が苦行になりそうな時は、立子句の「囀をこぼさじと抱く大樹かな」を眺めて肩の力を抜きました。
受賞の報せを受けたのは、西日がさす駅のホーム。興奮しすぎてスマホに何度も頭を下げ、何人もの人を振り向かせてしまいました。受賞は、ここからまた新たな修行という、立子の大樹からの声だと感じています。師と、叱咤激励を下さる多くの方と、賞への感謝を忘れずに、これからも俳句に挑戦していきたいと思います。

星野立子新人賞 北杜 駿 『はだけゆく』

このような素晴らしい賞を頂きまして、選考委員の皆さま、俳誌『森の座』の諸先輩方や日頃から切磋琢磨して句を学びあっている句友たちに深く感謝いたします。
コロナ禍という未曽有の災難の中での受賞でした。俳句というものが唯一の拠り所で、余った時間を句作に励み、俳論を読みふける毎日でした。そんな中での受賞の知らせでしたので、喜びに胸が震えました。
また、受賞の知らせを受けたときには、その翌月に、結婚を機に山梨へ移住を予定していましたので、どこか俳句の神様に祝福されているような心持ちがしました。
今受賞の50句を読み返してみると、まだまだ未熟さ故の拙い句が多く、この句群が残ってしまうとなるととても恥ずかしい限りです。この賞に慢心せず、日々の精進を忘れずに「文学と芸の融合」・「真・善・美の追求」を目指していきたいと思います。

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